MGコラム
見積もりは寿司屋のマインドで 〜アワーレートの落とし穴〜
先日、ある製造業の方から「アワーレートの出し方」について質問を受けました。
私は直感的に、「これは行あたりF、もしくは行あたりMQの話だな」と理解しました。
一体、彼の悩みは何だったのでしょうか?
✅誤解①:固定費と変動費の区別があいまい
まず最初に感じたのは、固定費と変動費の切り分けが正しく理解されていないということ。
変動費とは、販売数量Qに比例する費用だけ。固定費とは、それ以外のすべて。
この基本を押さえていないと、MQのグラフは直線にはなりませんし、当然アワーレートだって正しく出せるはずがありません。
現場でよく見かけるのが、税務会計用の全部原価計算をそのまま使ってアワーレートを算出しようとするケースです。全部原価計算では、Qに比例しない労務費や減価償却費などの「本来は固定費の要素」が原価に混ざってしまうため、MQやアワーレートの概念と相容れません。(MG経験者なら常識ですが・・・)
✅ 誤解②:アワーレートを「見積もりの土台」と考える
次に彼が言っていたのが、「アワーレートをもとに見積もりを出す」という発想。
つまりこういう式です:原価+アワーレート+ 利益 = 見積価格
これには違和感を感じました。この時点で、顧客の事情も、競争環境も、価値の感じ方も一切無視されているからです。
✅ MGの教訓:価格は毎回変えていい
MGでも期首の経営計画では「行あたりMQ」などの指標を使って戦略を立てますが、それはあくまで“参考”であり、“縛り”ではありません。
競合が少ないなら高値で売ればいい。
競合が多いなら価格を下げるか、そもそも売らない選択もある。
(それが許される状況なら)価格は市場や局面に応じて臨機応変に決めるべきです。
✅ 社員にMGを学ばせる意義
会社の上層部がアワーレートを提示した瞬間に、責任を問われたくないサラリーマンはこれを“絶対基準”として認識してしまいがちです。その結果辿り着くのが「平均値という正義」です。
これは正義でもなんでもありません。
この正義には(迷信にはよくあることですが)隠れた前提があります。
「利益はすべての商品・すべてのお客様から均等に得られなければならない」
請求書を切る業種(=受注販売)で小売店のように公示価格は必要ありません。むしろマージンは、得やすいところからは多く得て、得にくいところでは無理をしない。それが戦略です。それをやらずに「平均値という正義」にすがりつくのは単なる手抜きです。社員にMGを学んでもらう意義はこういうところにあるのです。自腹を切った経営者が決してやらないような手抜きをさせないために。
✅ 見積もりは寿司屋のマインドで!
たとえば「時価」の寿司屋があったとしましょう。
A:ひとりで来た常連
B:団体客
C:女性同伴で来た見栄を張りたい男性客
これらすべてに同じ価格を提示する寿司屋は、商売が下手です。
Cには見栄を利用して高く取る。
Bにはキリのいい値段で割引感を出す。その代わり、料理はほどほどで十分。
Aには最高の素材を、感謝を込めて丁寧に出す。
お客様の状況を見て、最適な値付けとサービスを考える。これが本当の「おもてなし」ではないでしょうか。
✅ 結論
アワーレートを出すなとは言いません。
ただし、それを「見積価格の基礎」として盲信するのは危険です。
工場は寿司屋と違ってお客様の顔が見えませんが、実際に買ってくれる相手は人間なのです。
価格は、市場の状況・顧客の価値観・競合環境を見て決めるもの(これを3C分析といいます)。
これは平均値のような単純な式ではなく、ひとりひとりの心を想像してベストプラクティスを探す高度な営みです。
経営の現場には、アワーレートや全部原価計算のような思考停止の迷信がゴロゴロ転がっています。
私たちはそれらを廃して、経営の本質を学び続ける必要があります。
お気軽にご相談ください

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